イカロスメール

  

格安航空会社の功罪


メールイカロス No.477
発行:(株)マイチケット 2010年1月16日 トラベルメールマガジン

格安航空会社の功罪

 空港で出発案内のボードを見るとコードシェア便 (Code sharing) と呼ばれ
るフライトが少なくないことに気がつく。コードシェア便とは、一つの航空便
に複数の航空会社の便名をつけて運航される便のことである。複数社で座席の
販売を行う便ということもできる。
 利用者側から見るとコードシェア便は少々紛らわしい存在でもある。「日本
航空だと思って予約したのに、実際に乗ってみるとアメリカン航空の機体だっ
た。」「アメリカンが運航する機体だからアメリカンのチェックインンカウン
ターに行ったら日本航空でチェックインするようにいわれた」こんな小さな思
い違いやトラブルが後を絶たない。
 この程度の思い違いなら大きな問題にはならないのだが、時折困った事態が
生じることもある。先日、中米コスタリカから成田で乗り継いで関西空港へ向
かう乗客が、サイズの大きな荷物を持っているというケースがあった。荷物の
大きさをコスタリカにあるアメリカン航空のオフィスに事前に伝えて、荷物室
で預かることができるという了解を取り付けていた。しかし、成田での乗り継
ぎの後に搭乗する、成田・関空間のフライトはアメリカン航空と日本航空のコ
ードシェア便となっているため便名はアメリカンでも機体は日本航空であった。
 出発の直前に念のために再度確認すると成田・関空のコードシェアの部分は、
荷物が積めるかどうか分からないと日本航空側が言い始めた。日本航空に確認
してもアメリカン航空に確認しても、はっきりとした答えを得ることができな
い。「コードシェア便の落とし穴」といえる事態の中でマイチケットのスタッ
フはお客様にかわって執拗に確認を迫ったところ、日本航空は「積めるか積め
ないかわからない」と責任を放棄した回答を繰り返すばかりであった。「積め
るか積めないかわからない」という事態に陥る理由は荷物室の開口部の大きさ
についての確実な情報と判断ができないことが原因であった。確実に積むため
の対策としては、機体が大きく荷物室の開口部にも余裕のある成田・伊丹線の
便に切り替えることを選ばざるを得ない。この切り替えに伴う費用は航空券の
再発行費用など270ドル。アメリカン航空会社は当初の案内の誤りの責任を
認めることなく、お客様にこの費用を請求した。すでに一般化したように見え
るコードシェア便ではあるが、乗り継ぎなどの対応を見るとこのようなトラブ
ルは少なくない。

 日本航空の再建計画の中では、新たな格安航空会社の設立が切り札のように
話題にのぼっている。関西空港の経営の将来像の中でも、アジアの格安航空会
社の就航を促すという方針が経営を安定させる魔法の杖のように語られている。
話題の新興の格安航空会社は安い料金とシンプルなサービスをうたって急成長
しているが、運航される路線に注目すると需要の多い二地点間の移動に特化し
たサービスという側面を持っていることを忘れてはならない。既存の航空会社
が世界的なネットワークを前提にしていることとその点が大きく異なっている。
 いうまでもなく、私たちの旅行は一回のフライトで単純に二地点間を移動す
るとは限らない。同一航空会社での乗り継ぎや、異なる航空会社間の乗り継ぎ
を安心してできることが旅行を計画する際の大前提となっている。私たちが、
ネットワーク型航空会社では当たり前のサービスとして享受している乗り継ぎ
サービスは、二地点間に限って運航される格安航空会社の場合にも同じように
期待して良いものなのだろうか。誰もが抱くであろうこの疑問に対して、現実
はとうてい安心できる答えが準備されているとはいえない状態である。
 これまで、格安航空会社がフライトキャンセルになった例では、同じ航空会
社の次回の搭乗についてのフリーチケットを配布したというケースがある。
「お詫びのために近い将来、無料でもう一度ご利用ください。」といわれても、
目の前の旅行の乗り継ぎの問題は何も解決しない。フライトの遅延に伴い乗り
継ぎができなくても、同様に、その先の別の航空会社の手配は自分で対処する
ことが求められる。

 航空会社の予約部門のサービスの質の劣化は、残念ながら様々なケースで顕
在化している。ほとんどのケースが航空会社の体制の問題であって、トラブル
の処理にあたる航空会社の窓口のスタッフが気の毒になるほどである。私たち
の毎日の仕事の中で実感しているこの傾向は、航空会社の経営が厳しさを増す
中で残念ながらますます顕著なものとなっているようだ。
 コードシェア便や格安航空会社の拡大は、まるで時代の流れのように報道さ
れている。しかし、新しいシステムの導入によって私たちが得るものがある一
方で、確実に失うものがあることをしっかり見定めておきたい。


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