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タンザニア・ルカニ村 人々の暮らしと新しい技術


メールイカロス No.478
発行:(株)マイチケット 2010年2月4日 トラベルメールマガジン

タンザニア・ルカニ村 人々の暮らしと新しい技術

 タンザニア、キリマンジャロ山の麓、標高1550メートルにあるルカニ村を訪
れた。ルカニ村は人口1800人、首都のダルエスサラームからバスで約8時間か
かる。マイチケットが企画するオルタナティブツアーではこの村に滞在する。
数年前からコーヒーのフェアトレードが始まったことで、私たちもルカニ村の
コーヒーを日本で気軽に入手できるようになった。フェアトレードのプロジェ
クトは、3年前に村人の協力で設立されたルカニ村の中学校の応援をしている。
 ルカニ村の中学校の校舎は雪をいただいたキリマンジャロを遠くに望む斜面
に建っている。まだ窓枠もできあがっていない教室で生徒達は熱心に勉強に励
んでいた。若い先生に学校の説明をお願いすると、これからスタートするコン
ピュータ教育について熱心に話してくれた。大事そうに布をとって「これがコ
ンピュータです」と見せてくれる。しかし、あいにく動かすことはできない。
昨日の晩から停電である。タンザニアには電気のない村が多い。時々停電する
とはいえ電気のあるルカニ村はコンピュータ教育には恵まれた条件といえる。
 とはいえ、学校で1台のコンピュータでどのような教育を始めるのだろうか。
停電の問題だけではない。インターネットにつなぐ固定電話がない。コンピュ
ータを携帯と接続していきなりインターネットとつなぐことは可能なのだろう
か。それでも先生方の夢は大きい。コンピュータの必要性を語る言葉にも力が
入る。しかし、コンピュータをどのように使って教育をはじめるのか、私の具
体的な質問に答える先生は一人もいなかった。

 ルカニ村の人々の公共の交通手段は乗り合いのトラックである。高原の涼し
さを感じるルカニ村から、満員のトラックの荷台に揺られて麓の市場へ買い物
に行く。キリマンジャロの裾野の斜面を下り切ったところに市場がある。舗装
のない山道を爆走して標高が下がるとともに一気に気温があがり熱帯の世界に
なる。トラックは人を運ぶだけではない。荷物だけを積んでも、ちゃんと途中
の家に届けてくれる。宅配便の機能も果たしているのだ。一台のトラックをみ
んなで最大限活用しているから、二酸化炭素排出量と仕事量を考えると素晴ら
しい効率である。一人で大きな車を乗り回す日本での私たちの暮らしが、環境
に大きな負荷をかける野蛮な習慣に思えてくる。
 市場では物売りの少年がカゴの中にナッツやキャラメルを入れてやって来る。
カゴの中をよく見ると食べ物に混じっていろいろな種類の携帯電話が入ってい
る。どれも小さなディスプレーと番号のボタンが並んでいるだけのシンプルな
デザインだ。日本製の複雑な機種はない。電話をかけるためには、まずこのシ
ンプルな携帯の端末を買う。次に電話のカードを買って塗料をひっかくと一列
の数字が出てくる。端末にその数字を入力すると一定の時間通話ができるとい
う仕掛けである。
 日本のソフトバンクやドコモのお店に行くと、分厚いパンフレットに割引コ
ースや付帯サービスが「これでもか」というほど並んでいる。適当に選ぶと、
使いもしない機能のためにお金を払うことになる。複雑な進化の果てに迷子に
なってしまったような、べらぼうに多い選択肢は、ここタンザニアにはない。
携帯電話を持っている人の数は少ない。それでもルカニ村の広い範囲で利用す
ることができるためか暮らしの中でけっこう役に立っている。

 コンピュータ教育が始まると、生活の必要に応じた基本的でシンプルなコン
ピュータの利用法がルカニ村の暮らしの中に根付き始めるのかもしれない。乗
り合いトラックのようにみんなで協力して、携帯電話のように不要な機能をそ
ぎ落としたシンプルなコンピュータの利用方法。それがどのようなものなのか、
複雑怪奇なコンピュータの迷路の中で暮らす私には想像もできない。
 基礎的な技術が普及していないタンザニアの村に、先端技術は突然にやって
来る。自転車やバイクではなく、いきなり自動車がやって来たように。ラジオ
ではなく、いきなり衛生テレビで日本の番組まで見ることができるように。
 キラキラ光る目をした中学校の生徒たちは、大きく変わるであろうこれから
の村の未来を生き抜くことになる。豊かな自然に包まれた緑の中で生きる彼ら
は、きっと私たちとは異なるやりかたで、新しい技術と付き合うことになるの
だろう。


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