イカロスメール

  

今は昔、単純で明快で分かりやすい仕事


メールイカロス No.490
発行:(株)マイチケット 2011年12月30日 トラベルメールマガジン

      今は昔、単純で明快で分かりやすい仕事

 タイの洪水で、あの企業もこの企業もモノ作りに関わる企業が、実は日本で
モノを作っていないことに、今さらのように気づかされた一年であった。旅行
業はそもそもモノを扱わず情報だけを操作しているのだから、立地条件に縛ら
れる要素が最も小さい仕事である。海外旅行を扱う会社が海外進出したからと
いっても驚くことではない。それでも、マイチケットと取引のあるA社の業態
のブッ飛び方は特筆すべきであり、それぞれの時代の合理性を反映して進化し
た結果、外部の人間には得体の知れない、まるでSF小説のような複雑なシス
テムになっている。
 A社は旅行業界の裏方である現地手配の老舗である。ヨーロッパへの団体旅
行のホテルや鉄道の現地手配をマイチケットから依頼している。大阪でも地価
が高い本町近辺に立派な自社ビルを持っているのだから、もうかっていること
は間違いない。大阪弁をしゃべる営業のスタッフが、打ち合わせの度にその自
社ビルからマイチケットのオフィスにやって来る。これだけであれば、まるで
地域に根ざした大阪商人の優良企業のように聞こえるのだが、その実態は「謎」
に包まれている。
 大阪弁の営業と話した後に、A社に見積もりを依頼するとインドネシアにあ
る見積もりセンターにデータが送られる。手間のかかる見積もりの作業は人件
費の安いインドネシア人スタッフが担当している。そこには少数の日本人が赴
任して指導にあたっている。ヨーロッパ各地の詳細な事情と、日本人が旅行に
求める繊細な内容を、文化の異なるインドネシア人がどこまで理解できるのか
は不明である。それでも、それなりに業務は機能しているから不思議だ。
 見積もりの段階をクリアして手配に話が進むとロンドンのセンターが活躍す
る。ヨーロッパ各地のホテルなどの現地手配は、ロンドンのセンターが担当し
ている。スタッフのクリスマス休暇の影響で12月の終わりの数日間はロンド
ンのセンターの機能が停止する。ロンドンからパリやベルリンの手配をするぐ
らいなら日本から手配してもよさそうなものだが、かなり以前からこの体制に
なっているところをみると、それなりに意味があるのだろう。
 請求書がマイチケットに届いて支払いの段階では、A社の香港の口座へユー
ロ建てで送金しなければならない。どうして日本側の銀行口座でないのかは理
解できない。支払いの度にマイチケットが高い送金手数料を負担して外国送金
をすることになるのだが、おそらくユーロ建ての振込にすることで、A社は為
替変動のリスクを回避しているのだろう。しかし、マイチケットがA社に支払
った旅行代金は、香港から先いったい何処にゆくのだろうか?税金はどこで支
払われるのだろうか?A社の決算書はどの通貨のどの時点のレートで決済され
ているのだろうか?お節介な心配なのだが「?」が次々とわき上がってくる。
 人ごとではない、A社の大阪弁のスタッフは、マイチケットが世界各地のN
GOと協働して展開するオルタナティブツアーの複雑な事情に興味津々であっ
た。おそらく、彼から見ればSF小説のように思える複雑怪奇なシステムをマ
イチケットは日々の業務でこなしているのであろう。
 単純で明快で分かりやすい仕事は、もう日本にはなくなってしまったのかも
しれない。


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