イカロスメール

  

400ドルのチェックの現金化に5000円の手数料


メールイカロス No.493
発行:(株)マイチケット 2012年3月4日 トラベルメールマガジン

400ドルのチェックの現金化に5000円の手数料

「本日の便はオーバーブックしたので、400ドルの小切手をさしあげます」
空港で係員からこんな案内をされたら、あなたならどうしますか。これは2月
中旬、アメリカ、カリフォルニア州フレズノ空港でおこった実際のケースです。
Aさんたち4名はサンフランシスコ行きのユナイテッド航空UA6278便のチェッ
クインカウンターで係員と押し問答となったものの、けっきょく搭乗券を手に
することはできませんでした。急ぎの要件がサンフランシスコで待っている。
次の航空便では間に合わない。レンタカーでぶっ飛ばせば、なんとか間に合う。
Aさんたちこんな状況で「400ドル」の提案に対する判断をしなければなり
ませんでした。
刻々と時間が迫る中で係員からの案内は「現金化できるチェック(小切手)
にしますか、次回の無料航空券にしますか」という二者択一でした。近い将来
に同じ区間をもう一度飛ぶことはありません。現金化できると説明されたチェ
ックを手にしてその場を離れるしか方法はありません。チェックの額面は一人
400ドル。この区間の航空運賃が税金などを含めて350ドル程度。オーバ
ーブックや欠航が珍しくないアメリカ国内線だから、諦めるしかないとAさん
たちは考えサンフランシスコへ走りました。
無事に仕事を終えて、Aさんたちは手にしたチェックをサンフランシスコの
銀行で現金化しようとしました。ところが、銀行の窓口では本人の口座がなけ
れば現金化できないと断られたのです。日本から旅行中のAさんたちが銀行口
座の開設などできるはずがありません。日本のシステムで言えばこのチェック
は「銀行渡り」の小切手ということになります。後で調べて分かったことです
が他人名義の口座でも現金化できないという制限も付いていました。しかたな
く日本に持ち帰って銀行で現金しようとすると一人5000円の手数料が必要
であることが分かりました。
航空会社のスタッフの不親切な案内に振り回されてサンフランシスコで貴重
な時間を費やし、日本でも銀行に足を運ばなければならない。その結果が手数
料で足が出るような金額のチェックでは、なんとも気の毒な話です。
このトラブルには、ちょっとした後日談があります。日本にもどったAさん
から、現金化の前にマイチケットに相談がありました。さっそく、ユナイテッ
ド航空に事情を伝えたところ「ご迷惑をおかけして申しわけございません。」
と口頭では謝ったのですが、このお詫びの後に一般の人には意味不明としか言
いようのない説明が続きました。「今回のようにご迷惑をおかけした場合はユ
ナイテッド航空で発行したチェックであれば手数料なしで現金化させていただ
くのですが、この便はコードシェア便でありチェックはスカイウエスト航空が
発行しているので、ユナイテッド航空ではどうしようもありません。」この業
界用語を一般の人が理解できる日本語に翻訳してみると、こうなります。Aさ
んの航空券は日本から出発してアメリカの3都市をユナイテッド航空で周遊す
る行程でした。搭乗する航空便の便名はすべてユナイテッド航空なのですが、
フレズノ/サンフランシスコ間のUA6278便はコードシェア便となっています。こ
の場合のコードシェア便とは、便名はユナイテッド航空であっても、機体と運
営はスカイウエスト航空が担当する、ということを意味しています。このため、
フレズノ空港での案内もスカイウエスト航空の係員が対応しました。400ド
ルのチェックをスカイウエスト航空が発行したのも、このような事情があった
からです。航空券の販売と、実際の機体の運営が異なる、コードシェア便とい
うシステムはかなり多くの便で採用されています。販売力の大きな航空会社と
路線網の少ない航空会社が提携することで利用者の利便性が向上する、という
のがコードシェア便の表向きの説明なのですが、いざトラブルになると同じ航
空便に搭乗していても、航空券の販売経路によって対応に差が出るという今回
のような事態に陥ります。400ドルと手数料程度なら「呆れた話」ですみま
すが、航空機事故の対応などのもっと深刻な事態ではいったいどうなるのでし
ょうか。
今回のトラブルから学ぶ教訓と対策。アメリカではトラブルの際に現金を渡
さずチェックを渡すことが一般的なので簡単ではありませんが「チェックでは
なく現金を要求すること」。どうしてもチェックを受け取る際は、「5000
円程度の現金化手数料を見込んだ額を要求すること」。


 

 

■体感する脱原発・フィールドワークとしてのドイツ【連載・第2話】

「脱原発への道 3.11後の世界とドイツの選択」に同行した山田の連載です。

再生エネルギーの村 マウエンハイム

ドイツの南、大学都市として有名なチュービンゲンからさらに車で南に1時
間30分。マウエンハイム村の位置はスイス国境からもそれほど遠くはない。
今回の旅の行程には入っていないが、ここから西に走ればやはり1時間30分
ほどで、環境都市として有名なフライブルグに至る。
残念ながら私たちの駆け足の旅ではマウエンハイム村まで足を運ぶことがで
きず、隣町のエンゲンにあるレストランでソーラー・コンプレックス社社長の
ベネ・ミューラー氏の話しを聞いた。彼は、この地域のバイオエネルギー等へ
のエネルギーシフト進展について、論理的に、明快に、機械のように正確に話
し続けた。ベネ・ミューラー氏の語りは「私もこんな風に話せたら・・・」と
思わせるほどドイツ風の魅力的な語りであった。私が持っていたドイツ人のイ
メージに最もぴったりした人物が彼である。もちろん民族に対するステレオタ
イプのイメージほど怪しいものはない。今回の旅でも要領を得ない話しをダラ
ダラと続ける人や、地理に不案内なバスの運転手など、実に様々な愛すべきド
イツ人が登場したことも事実だ。
マウエンハイム村は100世帯430人。必要な電力の9倍、熱の90%を
生産している。村から400メートル歩くとバイオガス・プラントがある。こ
のバイオプラントで生産した熱を熱供給網で村に送っている。熱供給網という
聞き慣れないシステムは、地下の配管に温水を循環させる地域版の大がかりな
セントラルヒーティングである。このような熱供給網は20世紀初頭からドイ
ツの各地で整備が進んできた。もともとあった地域版の社会資本が再生エネル
ギーと結びつくことで大きな効果を生んでいる。
日本の電力利用の最大値はエアコンがフルに稼働する夏の最も暑い日の日中
である。夏にそれほど暑くならないドイツでは暖房がフルに稼働する冬の寒い
日が電力利用の最大値となる。冬場の熱利用がそのまま、電力利用の最大値を
引き下げるという事情を聞いて、熱と電気を同時に生みだして利用するコージ
ェネ・モジュールがドイツで有効に機能する背景が理解できた。北海道や東北
以外の日本で熱利用といってもなかなかイメージしにくい。マウエンハイム村
では余剰電力を売電している。これまで、石油を買って域外に出ていたお金が
地域内に循環することとなり、さらに村の新しい収入源となっている。
ベネ・ミューラー氏が社長をつとめるソーラー・コンプレックス社は地元住
民22人が出資して設立され、株主は700人。中小企業、家族企業、都市事業公社
なども参加する市民企業である。スイス国境の湖であるボーデン湖周辺の人口
6万人地域を対象とし、2030年までにこの地域でのエネルギー自給を達成する
ことを目標としている。マウエンハイム村での再生可能エネルギー自給の取り
組みの歴史は意外に浅く2006年に始まった。それ以降7つの地域で同様の計画
が進展している。今ではバイオガスのプラントがこの郡で30カ所あり、エネル
ギー消費量の25%を生み出している。
ドイツのエネルギーシフトのキーワードは「再生可能エネルギー促進法」で
ある。2000年に制定されたこの法律はエネルギーシフトに絶大な効果を生み出
している。一例をあげると、この法律によって、再生エネルギーによって生み
出された電力を相当な価格で全量買いとることが定められた。
マウエンハイム村の再生可能エネルギー自給が可能となった背景には、この
ような法律とそれに基づいた政府の明確な政策がある。「環境改善だけで人は
説得できない。経済性があってこそ説得力が高まる。」ベネ・ミューラー氏の
魅力的な語りはこの言葉で締めくくられた。
すぐ近くまで行って村の話しを聞けば聞くほど、思いはつのるものである。
まだ見ぬマウエンハイム村に、今度こそゆっくり滞在するプランを作りたい。
日本でも同様のこころみを始めている農村の人々が参加すれば経験の交流が始
まる。私は、帰国後に次のプランの準備を始めている。

閑話休題

南ドイツといえばホワイトアスパラガスが美味しい。旬は4月下旬から6月
ごろ。市場は、ホワイトアスパラガスとイチゴとバラの花で埋め尽くされる。
数年前、南ドイツを歩いている時のことである。フライブルグに住む友人が、
魚のすり身で作った「しんじょう」のような料理を食べさせるレストランに私
を誘った。ドイツ料理のイメージが一変した瞬間であった。南ドイツではフラ
ンス料理のように手の込んだ料理が登場する。黒い森のキノコやマスの料理も
押さえておきたい。
当地のワイナリーも捨てがたい。これも数年前のことであるが、火山性の土
と水成岩性の土からなる二つのブドウ畑で収穫されたブドウから作ったワイン
を比較する試飲会に参加した。ワインの味と畑の土との関係を舌と喉で体験す
るという趣向である。岩塩とチーズをなめながら、製造の工程で水を加えるこ
とのないワインは、まさに土と太陽の恵みであることが納得できる。
マウエンハイムの村にゆっくり滞在すれば、自然の恵みに支えられた彼らの
暮らしに触れることができるはずだ。再生可能エネルギーへのシフトを果たし
た人々とワイングラスを傾けて語り合いたい。食後のデザートは、黒いスポン
ジがザクッとした食感があり、チェリーと生クリームがしっかり入っている
「黒い森のケーキ」かもしれない。
つづく


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